読書の備忘録

天然工房・林拓郎が何を読んだか、どうだったか、忘れないように記録します。
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「虐殺器官」「ハーモニー」/伊藤計劃
久々に深く沈んでいくような小説だった…僕はこういう理屈っぽいのが好きなんだな。

あらすじ(虐殺器官)
9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?

あらすじ(ハーモニー)
21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰にただひとり死んだはずの少女の影を見る―『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。第30回日本SF大賞受賞、「ベストSF2009」第1位、第40回星雲賞日本長編部門受賞作。


「虐殺器官」が近未来のお話で、さらにその未来が「ハーモニー」という繋がり。
「虐殺器官」読んだときはもう完全に「メタルギアソリッドだ!」としか思えず、あまり楽しめませんでした。
しかしこの理屈っぽい感じが好きで、「ハーモニー」を読んだら、これがすごい。

生命主義と言われるほど「健康」が横行している時代、先進国に暮らす人は体内にナノマシンの入れ、常に自分の体をコントロールされ、苦痛や病気にさらされる前に自動的に回復するという世界。街ゆく人がみな同じような体型をして、酒も煙草も身体に害なすものは駆逐されている。そして人類進化は最後の局面をむかえる…

作者の伊藤さんは既に亡くなっています。癌の病床でこの2編を書き上げたそうです。
どちらの作品も「痛みを無くす」というモチーフが出てくるのは、伊藤さんがどれほどの苦痛を味わっていたのか、ということの裏返しなんじゃないかと思う。
でも作中で登場人物たちは、「痛み」を否定的にとらない。それが生きているあかしだと。それを忘れてしまった世界の悲しさを描いています。

「虐殺の器官」とは何なのか。人類が調和した世界(ハーモニー)に生きるために捨てたものは何か。
心からお勧めします。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
(2010/02/10)
伊藤 計劃

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ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)
(2010/12/08)
伊藤 計劃

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アムリタ/よしもとばなな
よしもとばななは何作か読んでいるけどこれが一番好きです。

あらすじ
妹の死。頭を打ち、失った私の記憶。弟に訪れる不思議なきざし。そして妹の恋人との恋―。流されそうになる出来事の中で、かつての自分を取り戻せないまま高知に旅をし、さらにはサイパンへ。旅の時間を過ごしながら「半分死んでいる」私はすべてをみつめ、全身で生きることを、幸福を、感じとっていく。懐かしく、いとおしい金色の物語。

とにかく前篇を通して「赦し」の優しさが満ちている気がします。
たんたんと日々生きていく。いろんなことがある。どんなことでも起こりうる。それをぜんぶひっくるめて、当り前に生きていく。「生きることは水をごくごく飲むことと同じ」という文中の言葉がすっきりと心に沁みわたります。

アムリタ〈上〉 (新潮文庫)アムリタ〈上〉 (新潮文庫)
(2002/09)
吉本 ばなな

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肩甲骨は翼のなごり/デイヴィッド アーモンド
やべえ…すごい間があいちゃった…怠けてしまった。
本は読んでいましたよー!

タイトルが前からすごく気になっていた一冊。ある意味ジャケ買いです。

あらすじ
【カーネギー賞/ウィットブレッド賞受賞】
古びたガレージの茶箱の陰に、僕は不可思議な生き物をみつけた。青蠅の死骸にまみれた彼は誰……それとも、なに? ありふれた日常が幻想的な翳りをおびる瞬間、驚きと感動が胸をひたす。英国児童文学の新しい傑作!

子どものころ、誰もが通る不思議な出来事を、不思議な出来事のまま描いた素敵な小説。
海外版トトロ、と言ってもいいかな?
もーとにかく良いタイトルですよね。さらりと読めてさわやかな気持ちになれます。
甘し糧!

肩胛骨は翼のなごり (創元推理文庫)肩胛骨は翼のなごり (創元推理文庫)
(2009/01/22)
デイヴィッド アーモンド

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銃/中村文則
強烈。380円は安すぎるよ。

あらすじ
昨日、私は拳銃を拾った。これ程美しいものを、他に知らない-。銃に魅せられてゆく青年の心象と運命を、サスペンスあふれる文体で描く。第34回新潮新人賞受賞作、第128回芥川賞候補作。

ある男が、偶然拾った銃に魅せられ、信仰と呼んでもよいほど心酔していく。
僕はこの小説を読んだとき、音が全く聞こえない気がしました。そして思い描ける情景が、すべて白黒なんです。
最初からずっとある種の予感を感じさせて読み止まれなくなります。幸せにはなるまい、良い結果にはなるまい、そう思いながら男の行動を見守るしかありません。そしてラストは…

一読の価値あり。安くて薄いのでぜひ。


銃 (新潮文庫)銃 (新潮文庫)
(2006/05)
中村 文則

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プラネタリウムのふたご/いしいしんじ
童話のような世界が独特のいしいしんじ。
暗く、静かで、魅力あふれる一冊です。

あらすじ
だまされる才覚がひとにないと、この世はかさっかさの世界になってしまう。ーー星の見えない村のプラネタリウムで拾われ、彗星にちなんで名付けられたふたご。ひとりは手品師に、ひとりは星の語り部になった。おのおのの運命に従い彼らが果たした役割とは? こころの救済と絶望を巧まず描いた長編小説。

テンペルタットル彗星から名前をもらったふたご、テンペルとタットル。二人はそれぞれの道を歩き、
それぞれの希望と絶望を見つける。
派手さはありません。スカッとするお話でもありません。それでも、この小説を読んだ後は景色がくっきり見えるような、澄んだ気持ちになれる本です。

人間には皆だまされる才能がある。ぜひこの小説にだまされてみてください。


プラネタリウムのふたご (講談社文庫)プラネタリウムのふたご (講談社文庫)
(2006/10/14)
いしい しんじ

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